仕組みとシステムとコンピュータシステム
「システム」の定義は意外に難しい。電子辞書の広辞苑では「複数の要素が有機的に関係しあい、全体としてまとまった機能を発揮している要素の集合体」とある。それに対して「仕組み」は「ものごとのくみたてられ方。構想。機構」となっている。「仕組み<」とは、機能しているかどうかというより、くみたてられ方だから、システムより先に構想されなくてはならない。それに対して「システム」は、機能を発揮している要素の集合体だから、未完成で機能を発揮していないものは、まだシステムとはいえない。「コンピュータシステム」はシステムのうちコンピュータによるものだから、これもちゃんと機能しているものをいう。
したがって何かをシステム化する場合、仕組み → システム → コンピュータシステムという手順になる。しかし、現実にはこの手順をとらない場合が多い。すでに動いているコンピュータシステムを持ってきて、A組織用にカスタマイズするというやり方である。数学の演算ににて「公式」を使って現実に「適用」していくやり方である。このやり方は条件が同じ範囲ならば、きちんと動くことがはっきりしており、しかも早くA組織用コンピュータシステムができあがる。ところが、もってくるコンピュータシステムの条件を少しでもはみ出すとそこは「演算」できず、全体としてまとまった働きができないことになる。
このようなことは、意外に多く起きているように感じている。小売業のシステムをある生協の店舗にカスタマイズする。小売業にない要素が生協には多いのでそこは、本来の機能を転用して別の機能にあてるなどである。出資金の増資などがそれに当たる。また個別生協の固有の制度は、さらに難しい。だから、既存のコンピュータシステムには取り込めないので、外付けしてシステム化することになる。
生協は、共同購入を「発明」した。それを個配システムなどへ発展させてきている。ところが、店舗事業では進んだ小売業を真似て、真似るのはいいとしても、そのコンピュータシステムの範囲の中でシステム化しようとしているので、生協特有の部分や個別生協特有の部分が削ぎ落とされ、それを組み込むことに費用や労力がかかることから、めんどくさがられたり、無視されていることが多い。
やはり、現状を直視し、理念を踏まえて、こうありたいという構想から、帰納法的に、仕組み → システム → コンピュータシステムという手順でつくりあげていかなければ、特徴のないのっぺらぼうの組織になってしまうのではないだろうか。世の中でまだ誰もやっていないことこそ本当は価値あることかもしれないのに・・・
オーナートップが仕切る組織とサラリーマントップが仕切る組織との相違なのであろうか?しかし、トヨタシステムの原型をつくった大野耐一さんはオーナーではなかった。
生協もまだ間に合うと思う。供給高の伸張が見込みにくい今、あれこれいたずらにいじるより、目の前の組合員さんへ全力を尽くして応援しながら、腰をすえて生協全体の仕組み・システム・コンピュータシステムの根本を再構想してみることが大事な気がしている。
コメント
久しぶりにブログを拝見させていただきました。半年の短い間でしたが、色々とお世話になった時のことを思い出しながら、懐かしく読ませていただきました。現在は、生協からは離れてしまいましたが、改めて外から見てみますと、生協のシステムには、他の流通業界には無い独自の特徴があると感じています。
ただ、近年の動向を見てみますと事業連合のもとシステム統合が進められているようですが、果たして本当にそれで良いのかと疑問に思うことが多々あります。
コスト削減という命題もあるかも知れませんが、CMSさんの様に生協の理念をしっかり持って、「組合員さんのために、システムサービスが提供出来る組織」が全国に増えて欲しいと、心から願っています。
投稿者: 金阪 | 2009年08月01日 00:55